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『 見知らぬ場所 』 [海外作家]




ジュンパ・ラヒリ 著 / 新潮 クレスト・ブック

妻を亡くしたあと、旅先から 葉書を よこすようになった父。仄見える 恋人の姿。ひとつの家族だった父と娘が それぞれの人生を 歩む切なさを描く 表題作。



どこかの 誰かが、同じような 経験をしているだろう…
そう感じる 物語だった。

登場人物たちの 感情は、驚く程、現実世界に 溢れていそうな
ものなのだ。

それなのにも 関わらず、頁を 捲りたくなるのは、なぜだろう。
それは何とも ふしぎな 魅力。


ラヒリさんの この小説を 読んでいる時、うすい紗が、一枚
また一枚と、重なってゆくような 感じがした。

読後、気づけば、その紗が 何層にも重り 厚みをもち、そして
深い色合いになってゆく、そういう印象だ。


インドから、アメリカに渡ってきた、父親。
白人と、結婚した 娘。

私の一生で、外国に永住することは、きっとないだろうから
永遠に 分からないことだろうが、異文化の中で、暮らす難しさと
いうのは、伝わってくる。

難しさというのは、馴染めないとか、理解できない ということ
ばかりではなく、柔軟さのある 子供たちが

その国の文化に、容易に染まっていってしまう… という事も
含めて。(それは 仕方ないだろうな、と思う。)


祖国や、ルーツ、生まれ育った文化。

私が、そういうことを 客観視せざるおえない 状況に、たたされる
ことは、この先も 無いのだろう。

だからこそ、読書や 映画にふれることは大切だよな…と 改めて
思ったのは、自分だけの視点というか ポジションから 離れて
俯瞰で ものごとを 眺めたり

外国との 文化的背景の違いなどを知ったり、そういう色々な事を
考える機会を、えられるから。( ..)


どうしても、出てみないと、分からない事、気づかない事ってのも
当然 あるだろうけれども。


そうだよなぁ、と 思うところもあった 文を、抜粋しました。

ほかの一家に くっついていたくない。ごたごたして、いがみ合って、言いたいことを 言って、張り切っている、そういうのが 家族だ。そういう娘の 周辺に くっついていたくない。娘の 結婚の陰に寄って 暮らしたくない。もう大きな家に 住みたくない。 略) 生活は 肥大する。  65頁


父親は、孫の アカーシュの存在には、同居を 誘われるが、でも 孫は
いずれ大きくなり、自分のことなど 忘れてしまうと、ふっと想う。

すぐにそういう予想が ついてしまうとこも、かなり切ないものがある。

家族という 意識や、かたち。

お互いが、各々に抱く 想いなどは、この物語の 家族だけの話し
というのではなく

普遍的なことだなと捉え、読みました。







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