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「踏まれたらおしまいですね」 [K.H]



このblogを 始めたのが

08年 6月らしい。横に記してあった

その頃に、(たぶん)初めて書いた 本の感想が
川上弘美さんの 『 蛇を踏む 』だった。

川上弘美という、作家さんの 存在を始めて知ったのは
情報番組(ブランチ)の、本の紹介コーナーであったと
記憶している。

あの頃、新刊の『 風花 』が 紹介されていて 川上さん
ご自身も、インタビューを受けられていた。


何となく その本が気になったが、とりあえず 昔の本を
読んでみようかとなり、芥川賞 受賞作の『 蛇を踏む 』
や 『 神様 』などを 手にしたのであった。

著者の本を 読むようになってから、既に 約9年も過ぎて
いる事に 改めて気づいて、そんなになるかと 驚いた。

そもそも 私は、読書家でもないし、興味がわいて 購入
しても、本棚に入れたままの状態が 続く事のほうが多い
ので「もっと読んでみたいな」と 思える、作家さんに
出逢う機会が、それ程 多くない。

(でも、小川洋子さんが 書かれている、書評本などから
海外の作家さん達を知り、興味がわいた本は 多い

例えば、ボリス・ヴィアン著うたかたの日々 』とか)

そんな 私にとって

新刊が出れば、必ず 気になる、作家さんの 一人であり
(すでに 文庫化されている)エッセイなどは、ほぼ
持っている(未読も多いが…)位、気になる方なのだ。

現実的でないような、それでいて 現実的であるような
そもそも そんな境界線を、はなから 設ける必要なんて
ないのかもしれないと 思わせてくれる、作風で

(過去の作品と比べると、最近の作品では 色々と変化
もあるが)そういう 何処かしら曖昧な世界観に、私は
惹かれてきたのだろう。

本棚にある 他の作家さんの本でも、そういう系統のが
多く、今頃になり、好む雰囲気のものが 判然とした。

現実は、見えるもの全てが 極彩色だから、小説くらい
パステルカラーのような、淡い雰囲気の中に 漂いたい
という願望が、無意識ながらも あるようだ。

哀しみでも 寂しさでも、そういう、濃い想いってのは
読んでいて しんどい。本当は、強烈な感情であっても
薄墨のように、ぼやっと滲ませてくれる 文体を好む。

それでも、遠くの方から響いてくる 強風の音のように
得体知れずの 不穏さが、迫ってくるのだから不思議…


(読書とはいえ)淡さの中に、ずっと居るというのも
意外と、妙な感覚に 陥ったりするのですよね…

視界を遮られる 濃い霧の中を、彷徨っているような
増してゆく不安や 徒労などの 疲労感に、どこか似て
いるような 感覚とでも、いうのだろうか。

現実的過ぎても、幻想的過ぎても、極端過ぎるのは
どっちも疲れる… ということなのでしょうね。


(この内容を 投稿する日と、ツイートにあげた日が
前後するが^^; )

" 11月17日

『蛇を踏む』を再読。川上さんの本はわりと読んだが
この本に出てくる蛇ほど、圧をかけてくる 登場人物は
いなかったような? 

蛇の世界は魅力的だからと、強引に誘おうとする様は
やや狂気的。ダメだと思いつつ、飲み過ぎてしまう
お酒の誘惑と、蛇の誘惑が 何だか少し重なる。"

このblogに書いた、約9年!前の感想を、今読むと…

何だか よく理解できていないけれども、きらいでは
ないらしい、という事は 分かった。

初めて読んだ 当時も、今回も 思った事なのだが

44~45頁にかけて書かれている内容が、凄く印象的で
『 蛇を踏む 』といえば、この箇所が いつも頭に浮かぶ。

この小説に 登場する、" 蛇 "の比喩というのを、勝手に
解釈してみると、何かへの境界を イメージした。

それが、対 人間であっても、今いる世界とは 違う世界
であっても、ツイートに書いた、酔う という状況でも
そうなのだが

日常の中の、本来の状態とは 極端に違う感覚への 入口
その扉の役割を、蛇が 担っているように思えて。


解説、松浦寿輝さんの 一文から引用

いや、身を委ねようとして 委ねきれない ためらいが「蛇を踏む」一篇の主題と言うべきだろうか。 178頁


この、" 身を委ねようとして 委ねきれない ためらい "
という表現、何だろうか 凄く伝わってくる感覚があり

川上作品の中の 登場人物達も、表面上は、淡々として
いても、こういう 静かな葛藤を 胸に抱えているような
タイプが多かったような 記憶がある。

その、ためらいという 揺らぎは、誰しも皆、心の奥の
方に 抱えているような気がするから、他人事ではなく
共感できるのかもしれない。

蛇は柔らかく、踏んでも踏んでも きりがない感じがした。

今、感想を 書いていて、まさに "きりがない" 感じで…

~のような という、曖昧な表現ばかりが つらつらと
頭の中に 浮かんでは 消えてゆく

なので、きりがないから

ここらで お終いにしたい。







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タグ:蛇を踏む

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