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鏡の中、神秘の国へ [海外作家]



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ヨースタイン・ゴルデル 著 / 日本放送出版協会

池田香代子 訳





この本の壮丁は、北欧の夜の雪景色が描かれ、その ブルーの色彩が きれい。

病気で 苦しんでいる少女(セシリエ)の元に、"アリエル"という天使? が
現れる。セシリエは、アリエルと様々なことを 話してゆくうちに、この世から
自分が 離れていくことに、恐怖を 抱かなくなってゆく。

この本の中で、一番好きな言葉がある。

それは、アリエルが少女に言った、『この世に生まれるってことは、世界を
まるごと プレゼントされるってこと なんだよ』 というところ。

ここを読んだ時に、ちょっとした衝撃を受けた。この地球に 訪れる者ではなく
生まれくる人に 贈られる物だという 解釈が、とても 素敵であるし、そんな風に
考えたことが 無かったので、目から鱗の言葉。

美しく雄大な自然や、空の広さや夜空の美しさ、全てがまるごと贈り物 ♪ 
素晴らしい! …と思ったのですが

ふと その言葉の、意味の深さ について 考えていたら、美しいもの だけに関して
「おくりものー」と思っていたことよりも、更に 解釈が広がると、丸ごと という
のは、『世界の負のもの』 も含まれているの ではないかと。

美しさと醜さ、清さと濁りetc
全ての対が そこには存在しているから、こわい こわい。

タイトル 『 鏡の中、神秘の国へ 』の原題は、鏡に映ったぼんやりしたものを
だそうで、昔の鏡は、金属を磨いた物を 使用していたらしく、映る物は ぼんやり
と していたであろうと、訳者の 頁にあった。

これまた 意味深長ですね、その中に、不思議な世界が存在してそうだな。

感覚というものを 体感できないが、不死身のアリエル。
不死身ではないが、私達と同じく それを 体感できる セシリエ。対極ですね。
実は アリエルは、魂を表しているのかも。

私も、いつかは確実にこの世から消える存在。

その前にも、ずーっと、人間は 存在し続けていて、ぐるぐると巡る 人の循環の
ようだ。皆、どこへ行ってしまったのだろうか。


この本と関連性が ないかもしれないが、なぜか、パンドラの箱が頭に浮かぶ。
箱に、最後に 残ったのは、"希望"。その他の負のものは、全て箱から出てしまった。

清らかなものだけの世界で 生きてゆきたいけれど、この世には、それ以外の物も
沢山 存在しているから、それらも一部として、どこかで 認めざるおえない。

繊細さとか、純粋さを持ち合わせた人は、果たして 幸せなのだろうか…。
ふと 想像したのは、それだけ、世の中は ダークな面が 強すぎるから、鈍いほうが
色々と らくかもしれない と。。

パンドラの箱には、負のものばかり 詰めこまれていたのに、なぜ希望を入れたのか?

興味深いですね。







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