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『 ライク・サムワン・イン・ラブ 』 [ドラマ,映画]




キアロスタミ 監督



作品を、今回 はじめて鑑賞した。

http://www.likesomeoneinlove.jp/


レビューを見ていると、あのシーンは ○○を意味しているだろうとか
その他もろもろ、色々な解釈のもと 皆さん鑑賞されているようなので
すごいですね。


私は そんな器用なことは できないので、単なる、観た印象を。

まず思ったのは、一方通行な想いや、一方的な会話で 占められいるので
誰の想いも 全く交差していないな という印象。

なのに、ふしぎと、殺伐としていて虚しいな とか、冷たい孤独感が漂って
こないように思えたのは 何故だろう…(でも、ドライとも また違うわけで)

それは、雑踏の中で、誰かと通り過ぎる あの刹那的な感覚と、この映画の
世界が 似ているような 気がしたからだろうか。

一瞬、その他人のことを 認識するのだが、次の瞬間には もうその印象は
薄れて、さぁっと消滅するような、その感じ。そうだとしたら、殺伐も虚しい
も 孤独といった そんな感情も、そこにはないですからね。

そういう意味では、鑑賞後の余韻が あとをひくようで、ひかないような
でも 記憶に残るという、不思議な作品でした。


一方的な、というところに 話題を戻すと
(冒頭、携帯で話している 女性の声から、すでに、それはうかがえる)

デートクラブの主人(?)から明子へ、依頼主(タカシ)の処へ 行くようにと
説き伏せようとしている 会話から、その 一方 方向の感じは、さらに強まる。

上京してきたという、明子の祖母からの、何件もの留守番電話の
メッセージが、しばらく続き、彼女は それを ただ聞いているだけ。

元 大学教授のタカシ、明子の恋人の ノリアキ しかり、この物語に出てくる
人々は、みーんな 明子へと向かって、何かを言っている。

では、その肝心の明子といえば、どの方向からの言葉も、聞いているようで
いて、まったく それを受けとめていないような、茫々たる表情を、終始 うかべ
たまま、観る側に ちょいとしたストレスを感じさせる。

(私は、そう思った。そして ノリアキとのことも、きっと、なあなあにしか
できないのだろうな…と)

そして、ひと波乱の末、唐突なエンディングで 幕を閉じる。

先にネットで、オチを 知っていたから なのか、「えっ終わり?」と思わずに
済んだのだが、あれは あれで 印象的な切り方かもしれないですね。

あの後、どうなったのだろうと考えると、その場のその後の 処理は、想像
できるのだが、もっと先の ノリアキと明子の関係は、前途多難だろうな…と
そちらの方を 知りたくなる。

ノリアキのようなタイプは、どんな理由があったとしても、本人が執着から
解放されなければ、彼女が自分から離れることを、許さないだろうから。

こういう人物、世の中に 沢山いますよね。日々のニュースで、必ず 一つは
あるような、DV男による 悲惨な事件。

怒りのコントロールがきかず、見境がつかなくなってしまい、何をしでかすか
分からない…、そういう恐怖。観終えた後も、そのノリアキの絶叫が 耳に残り
ずっと 恐いっす。

手段と 想いが ねじ曲がっているので、擁護はできないのだが、彼の想いは
実は 懸命で、彼女に きちんと向きあってもらいたいが 故なので、これまた
痛々しい。

最も 印象的だったシーンは、明子の祖母が、彼女のことを 駅で ずっと
待っている姿。 ここには 胸が痛み、何かが グッと込み上げてきた。

と、うまく感想を まとめられないまま、私も フェードアウトしよ……







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