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ドンナ・マサヨの悪魔 [本 & 書評]





村田喜代子 著 / 文藝春秋



赤ん坊は謎だ! 「おれは長い旅をしてきた者だ」娘の体内から 不気味な声が 語りかけてくる。声の主は いったい何者なのか? 生命誕生の神秘に迫る 傑作長篇。


いつだったかの 週刊ブックレビューをみていて、宇宙服のようなのを
身にまとった 赤ちゃんの装丁に、惹かれて 読みたくなったのだった。




川上さんの書評集より、同著者『 龍秘御天歌 』について書かれていた
感想と、この本から わたしが感じた、文章についての 印象が全く 同じ
だったので、一部を 抜粋。

平明で客観的な、それゆえに知らず知らず 微苦笑をさそわれる語り口


マサヨと 悪魔(らしき口調)が会話するという設定に 興味をひかれ、また
夫や イタリア人である娘婿、パウロのキャラクターには ユーモアがあった。


「ヴォンジョルノー ドンナ マサヨ」 これは、パウロの 毎朝の挨拶の言葉。

ドンナ、はいうまでもなく 女性の尊称で、古典的で エレガントな意味を持っていて、これに自分のことをさす(マ)を付けると、私の理想の女性、すなわちマドンナ、聖母マリアになるそうです。


ここを読んで、マドンナとは そういうことなんだぁ、と 納得していた。

イタリアでは、結婚の仕方が 二種類あったり、誕生した子供には 聖人の
名前をつける風習やら、イタリア語の プチ紹介とうとう、雑学的なことを
色々知ることができて、それらも 興味深かった。


アクマの言葉で、最も 印象的だったのは、大昔の人々が 死という現象を
目の当たりにした後に、死者を 悼み そして祈るという行為をするまでには
隔たりがあった というところだ。

「 略) ワタシたちは花に包まれた父を見下ろした。 そこでワタシたちは初めて死を悼むことを知ったが、死者に祈る術は知らなかった。 ワタシたちがそれを知るまでにはなお何百万年も要したのだ。」


何百万年とは、ほんとうなのだろうか。それは、宗教の始まりなどを 意味
しているのかもしれませんね。

「祈りを知る前に、ワタシたちは克服せねばならないものがあった。それは死というものへの怖れだ。(略) 」



死は悼むもので、死者に対しては 安らかな眠りを祈るもの。当たり前に
そう思っていたことを、知る術がなかった、というところを読んで、それは
どういう感覚なのだろうかと 想像してみてが、分からなかった。

ミイラをみていると、わたしは ミイラになんて なりたくないと思うが、昔の
人々は 魂が戻ってこられるように、体を 残しておいたのですもんね。

人類が繁栄してきた 歴史というのは、また、死を受け入れ 理解しようと
してきた 歴史でもあるのでしょうね。










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