七夜物語 [K.H]
川上弘美 著 / 朝日新聞出版
紹介文
小学校四年生の さよは、母さんと二人暮らし。ある日、図書館で出会った 『七夜物語』 というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと 夜の世界へ迷いこんでゆく。大ねずみのグリクレル、甘い眠り、若かりし父母、ミエル…七つの夜を くぐりぬける 二人の冒険の行く先は。
最後の夜の世界で、二人は 完璧にうつくしい子どもたちと出会います。
その 魅力か、夜の世界の魔力ゆえなのか分からないが、二人は お互いをみすぼらしく感じて
しまうようになり、あげく 灰田くんはその子たちの虜になったまま、ついていってしまう。
その場面での言葉が 印象的だった。
351頁
「ねえ、自分には何かが足りないんだって、灰田くん、思うことはない」
「あたしも、いつも自分には何かが足りないんだっていう気がしてるの。そしてきっと、それはどんな大人になっても、足りるようにはならないんじゃないかって」
「いったい何が足りないんだか、あたし、わからないの。でも、その足りない何かは、ずっと向こうのどこか遠いところにあって、決してあたしのところへはやってきてくれないの」
「あのね、なんだかうまく言えないんだけど。灰田くん、あの完璧にうつくしいこどもたちを見てると、足りない何かが戻ってきたような気もちになったんでしょ」
「でもそれは、うそこの何かなのよね」
何かが足りないか…。 ずっと探しあてられない何かなんだろうな、わかるなぁ…と思って
抜粋したくなった。
また、追記しようと思います。