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おとぎ話の忘れ物 [O.Y]



小川洋子 著,樋上公美子 画 / ホーム社  


画家・樋上公実子のイラストを モチーフに、作家・小川洋子が 紡ぎだした 残酷で可憐な 物語。書き下ろし 競作集。

ずきん倶楽部 ,アリスという名前 ,人魚宝石職人の一生,愛されすぎた白鳥
これら 四つの物語と、多くのイラスト。

以前、ほんとうは 怖い童話、というのが 流行りましたね。好奇心で、読みたいと
思ったのは、いつだったか。

童話や、おとぎ話というのは、子供向けに 変えられていたとしても、往々にして
幸福な予感を 残したりはしない。

ギロチンで、スパンと断ち切るように 物語の結末を迎えるものが、多いように思う。
私の中では、童話や おとぎ話というのは、そういう冷淡な美しさを 含んでいるもの
という認識なのだ。 (読んだものが、偏っていた のだろうか…)


この本の中で、最も すきなのは、『 愛されすぎた白鳥

孤独な 森の番人、静かな湖、キャンディー、美しい白鳥。情景が、鮮やかに
浮かびあがった。 愛は(想い)重い。

次に すきだったのは、『 人魚宝石職人の一生

人魚というのは、海という世界も 相まって、美しい要素がふんだんに 含まれている。
色とりどりの貝、儚い泡。宝石職人 という存在を、登場させることによって、更なる
流麗さを ただよわせている。

人魚姫、宝石職人、姫の姉たちも、海の中の人々に描かれているのは(大仰な表現に
なってしまうが)自己犠牲の精神。陸の人々は、利己的で傲慢。涙の泡か、きれいだな。

ずきん倶楽部 を読んでみて、ずきんを被る 好い効果が会長の説明で
具体的に わかった。

…… 顔を小さく、瞳を大きく 錯覚させます。蝶々が止まります。…… 貞淑と 純真と しおらしさを 表現します。……ずきんを 被っていれば、世の中の 無慈悲で 冷淡で 残虐な音を 聞かずにすみます。ね? そうじゃありませんこと?

そういえば、フードを 被っている子、何割増しかで可愛く見えるもんな。結末の描写が
ビターで、苦手な 部類だった。

アリスという名前

今まで アリスといえば、可愛らしい服を着た 姿がイメージに 出てきたが、これからは
違う印象になりそう。アリスから、そこへ結び付く 発想は、なかったな (゜o゜)

挿入されている 樋上さんの絵からは、硬質な静の中の美、という印象をうけた。

表情のない 少女たちは、何を 想っているのでしょうか。






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