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眠り [本 & 書評]






村上春樹 著 / 『 TVピープル 』 収載



有名な作家さんなので、何か一つでも読みたいなと、思いつつも
作品数が多くて、何から入ればいいのか 迷っていた。


たまたま 書店で見かけた、短編集を 数冊手にとり、『 眠り 』で、
初めて 村上さんの本を 読むことになった。

      
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紹介文
17日間一睡もできず、さらに目が冴えている女。



(多くのレビューからの印象で)
村上さんの 文章の雰囲気は、わたしの中で、かってにイメージが
広がっていて、読んでみると かるく拍子抜けした。

そりゃ、いくら突飛なものを書くにしても、文法がありますもんね(笑。


しかし、文字を目で追っていくうちに、「ん?何だろう このかんじ」
誰かの文章によく似ているな、と思った。

でも、その誰かが、誰なのかはよく分からない。

影響を受けた 作家さんも、多いとのことなので、リズムが 似てたり
するだけの事 なのかも。
    
       

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『眠り』 の感想に戻りますが、


主人公の女性は、自分の現実を 否定したくなかったのでしょうか。
だから、無意識的に、眠ることを拒んだのだろうか…。


興味深い、記述がありました。長いので要約しますと、


《 人間は、一定の個人的傾向から 逃れることはできず、その傾向は
よほどのことがない限り、二度と消えない。人は、その傾向という檻に
閉じ込められて生きている。

眠りこそが、そのような傾向のかたよりを 中和する。つまり、眠りが
そのかたよりを調整し、治癒するのだ。 》


図書館で、眠りに関する本を読んだ主人公は、こうかんじます。

じゃあ、私の人生というものは いったい何なのだ? 私は傾向的に消費され、それを治癒するために眠る。 私の人生はそれの繰り返しに 過ぎないんじゃないか? どこにも行かないんじゃないか? (略) 眠りなんか必要ない、と私は思った。 



この文が とても印象的で、特に、どこにも行けない、という発想が
おもしろいな。

治癒か…。たしかに、何かがリセットされるような気になりますし、
考えすぎて疲弊したら まずは眠ろう、と思うので 納得。


結末の描写や、終わり方が ちょっとこわいです。

車は、からだ や思考の比喩として捉えたので、それに閉じ込められて
泣いている女性の気持ちに、共感できた。

女性が乗っている車を、揺さぶり続ける、二つの黒い影(男)は、何を
意味しているのだろうか。 それは、夫と息子 なのだろうか。


たまに考える。
もし、人の生きる仕組みに、睡眠がなかったら と。 とにかく、ゾッとする。  

でも、人生の三分の一 の時間は、眠っていると知った時、それはそれで
かるく 委縮するような 気持ちになった。









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