SSブログ

『 センセイの鞄 』 [K.H]



川上弘美 著 ╱ 文春文庫


『 蛇を踏む 』 『 おめでとう 』と共に買い、本棚に入れたままに なっていた。
しおりを はさんだまま、いつも 積読ばかり しているので 嬉しかったなぁ。

紹介文

駅前の居酒屋で 高校時代の恩師と 十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口を たたき合いながら センセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩りや花見 あるいは島へと出かけた。 略)センセイと私の、ゆったりとした日々
 

ツキコさんは37歳で、センセイはツキコさんより、30歳以上 年上なので、かなりの
年の差。 ツキコさんは、センセイとばったり再会した時、センセイの名前を思い出せない
ほどに、当時 あまり関わりがなかった。

これは ドラマ化されていて、その宣伝の時に 原作がある事を知った。

裏の説明に、谷崎潤一郎賞を受賞した名作と あったので、その"名作"という単語に
期待をよせつつ 手にとってみた。その賞は、よく知らないけれども…


(結末を 書いています)

二人の間で、自然とルールが出来たり、約束をして 待ち合わせをするわけでもなく
心地よい距離間を保ちながら、飲み友達として 少しずつ仲良くなっていく 過程は
本当に ゆったりとした時間の 流れをかんじる。

お互いのタイミングが合い そのお店に行けば、週に何度も会うこともあれば、一月
全く 会わないこともあったり。


私は、この二人は、親子でもない友人でもない、だけどそこには温かい繋がりがある
という内容で、終わるのかと 思っていたが、この物語は 恋愛に発展するのですね。

淡々としてて、どことなく 生気がないような印象を受けた ツキコさんが、センセイを
好きになって、すこしずつ 女性らしさが出てくる辺りは、なんだかこっちが こそばゆい
感覚になった(笑。

とくに、それが表れていた場面は、センセイと島に行った日の、夜のツキコさんの
言動だったように思う。それには どこか 少女のような 可愛らしさも加わっていた。

ツキコさんの感情が、変化していく過程もなだらかで、あれ、気づいたら好きになってる
というあの感覚 と近いものがある。

センセイは、別に受けを狙うとかでは無いのに、何かおもしろくて、読みながら、くすり
と 笑える箇所が結構あって、ツキコさんの口に、自分の指をちょっと入れてみたりと。

ドラマチックな展開が 多くあるわけでもないし、ほとんど二人で飲んでいるシーンが
多いのだが、その雰囲気が 温かくて、ほんわかとした 良い空気が 漂っているので
読んでいて心地よかった。

とても真面目そうなセンセイが、ツキコさんの 恋人になっている 雰囲気を、想像
しにくいのだが(´∀`) ずっとあのまま、ですます口調なのかな? と。

センセイが亡くなった後、ツキコさんがふと感じる(天井から センセイの声が聞こえて
きそうだ、という所の) 空虚に包まれた寂しさが、とても伝わってきた。

(どうでもいいかもしれないが、センセイが市で買った、つがいの ひよこのその後は?
少しだけ 気になった[ー(長音記号2)]


のほほん とした気分にひたりたい時に、おすすめです。
 




共通テーマ: